「循環器科・心臓血管外科」の診療内容
狭心症・胸痛
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)とは
虚血性心疾患は、動脈硬化の進行などで心臓の栄養血管である冠動脈に狭窄が起きるために、胸痛や圧迫感などの症状が生じたり、心筋への影響から、心不全や危険な不整脈が出現したりする疾患です。代表的なものが狭心症と急性心筋梗塞です。
虚血性心疾患の種類と診断
狭心症では、階段を上る、急いで歩くなど一定以上の労作で胸痛が出現して、休むと改善することを繰り返すのが典型的です。冠動脈が動脈硬化により狭くなり、血流障害が起こっている可能性があり、循環器内科での精査が必要です。注意が必要なのは、これらの症状が今までより軽い労作や安静時に出現したり、胸痛の持続時間が長くなる、痛さの程度が強くなるなどあれば、不安定狭心症という心筋梗塞に移行しやすい状態(冠動脈が血栓等で詰まりかかっている)であることもあり、早急に医療機関を受診することが大切です。
急性心筋梗塞は突然の20-30分以上持続する胸痛が起こる事が多く、冠動脈が血栓等で詰まって心筋に酸素が供給されず心筋の壊死が進行している状態です。心筋壊死による様々な合併症(不整脈、心不全など)を起こす可能性が高く、緊急で医療機関への受診が必要です。病院では必要に応じて緊急心臓カテーテル検査などが考慮されます。
当院では心電図、心臓エコー、ホルター心電図などで診断し、必要に応じて専門施設へ紹介します。
弁膜症
心臓弁膜症 (僧帽弁、大動脈弁疾患など)
心臓内を血液がスムーズに流れるように、心臓には膜でできた4つ弁があり、ある程度血液を溜め、押し出した後、血液が後戻りしないように働いています。弁膜の病気としては弁の閉じ方が悪くなる閉鎖不全症(逆流)と、弁が硬くなるなどで開きが悪くなる狭窄症があり、これらを総称して心臓弁膜症と呼びます。
弁膜症が進行すれば労作時の息切れ、安静時にも常に息苦しい、臥床時に息苦しさ増悪し、上体を起こすと楽になるなど、重症度や原因により様々な心不全症状が出現することがあります。また大動脈弁狭窄症では胸痛や失神などが起こることもあります。
心臓弁膜症の治療は、軽-中等症であれば無治療で経過をみたり、薬物治療を行うこともあります。重症になれば手術治療が基本となりますが、年齢や併存している病気、全身状態、社会的な背景など様々な要素を考慮して慎重に検討されます。高齢者の大動脈弁狭窄症に対しては、外科的大動脈弁置換手術より身体的に負担の少ない経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation) などが検討されることもあります。
不整脈・動悸
心臓の拍動を強く感じる、脈拍が急に速くなる、時々脈拍が抜ける感じがする、脈がばらばらに感じる など。
甲状腺疾患や貧血、精神的ストレスなど心臓以外の病気でも生じますが、心臓疾患が原因の場合は不整脈や心不全などが考えられます。不整脈は全てが病的とは限らず、治療が必要のない場合も多くありますが、なかには失神や心不全、脳梗塞、突然死につながるものもありますから、きちんと検査を受けることが必要です。
検査としては、安静時心電図、ホルター心電図検査(24時間心電図)、採血(貧血、甲状腺機能、電解質など)、心臓超音波検査(心臓の大きさ、動き、心臓弁膜症、心不全の有無など評価)などで動悸の原因を調べ、治療が必要かなど評価します。
ペースメーカー定期管理
不整脈治療の一つとして、ペースメーカー移植があげられます。ペースメーカー手術後は、正常に作動しているか、内臓電池のに問題がないかを定期的にチェックする必要があります。当院ではペースメーカー移植後の定期管理を行っています。
心不全
心不全は、「全身が必要とする血液を心臓が上手く送り出せなくなった状態」で、息苦しさや疲労感、足のむくみなどの症状が出る一般的な心臓の病態で、深刻な慢性病です。心不全患者数は2030年に130万人に達する見込みで増加傾向にあります。病状が悪化しないように、症状や出現しうる兆候を認識して適切に治療し、継続的に観察していく必要があります。塩分・水分の過剰摂取や高血圧の悪化などをきっかけに悪化することも多く、生活習慣の改善も必要です。年齢が上がるにつれ心不全患者数は増加傾向にあり、様々な内科疾患を合併した症例が増えています。
労作時の息切れ、安静時にも常に息苦しい、臥床時に増悪し、上体を起こすと楽になるなど、重症度や原因により様々な症状の出方があります。心不全の原因としては、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(心臓は養う冠動脈の血流が動脈硬化や血栓が原因で悪くなる病気)、心臓弁膜症、心筋症(心臓の筋肉の収縮が弱り心臓が拡張したり、心筋が肥大する病気)、肺の病気(慢性閉塞性肺疾患など)による心臓への負担の増加などがあります。胸部レントゲン検査、心電図検査、血液検査、心臓超音波検査などを行い、心不全の程度、原因を調べることが重要で、更に高次医療機関では必要に応じてCTやMRI、心臓核医学検査、心臓カテーテル検査などで精査し、原因に応じた治療を行います。
心臓手術後
冠動脈バイパス手術後、弁膜症手術後、人工弁置換術後、不整脈手術後など、それぞれの手術や全身状態に応じた管理、定期検査を行います。
大動脈瘤
大動脈瘤は、動脈硬化などで弱くなった大動脈の壁が部分的または全体的に拡張してこぶ(瘤)を形成する病態です。血圧高値が続くと、血管に負担がかかって、血管の瘤がさらに大きく膨らみ、動脈が破れる恐れがあります。破裂した場合、生命に危険が及ぶ疾患です。そのため血圧をきちんと管理することが大切となってきます。また脂質異常症、喫煙など動脈硬化を促進する疾患は動脈瘤ができる危険因子と考えられています。
大動脈瘤の症状と経過
大動脈瘤は通常、無症状で経過し、腹部の拍動性腫瘤の触知や、胸部レントゲン、腹部エコーなどでたまたま見つかることが多い疾患です。急速に拡大したり、破裂したときにはじめて激痛を感じます。そのため大動脈瘤があるとわかっている部位に痛みが起こった場合は、早急に専門施設の受診が必要です。
治療
大動脈瘤と診断されれば、血圧のコントロール、禁煙や生活習慣病の管理が必要です。これら基本的な治療を行いながら、瘤の大きさを半年から1年毎に、主にCTなどで経過を追い、瘤の直径が、胸部大動脈瘤で55~60mm、腹部大動脈瘤で45~50mmを超えれば手術が必要と判断され治療可能な病院を紹介させていただきます。
下肢動脈疾患 (閉塞性動脈硬化症)
下肢の閉塞性動脈硬化症は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙など生活習慣病等が原因となり、下肢の動脈に動脈硬化が進展して、狭窄・閉塞を起こし下肢への血流、酸素供給が足りなくなる病気です。症状としては、一定以上の距離を歩く、階段を上るなどで下肢筋肉の酸素需要増えても、血管狭窄のため血流、酸素供給が追い付かず、足が痛くなり、安静にすると改善する(間欠性跛行)、重症になると安静時にも足の冷感、痛み、しびれなどを自覚することもあります。
当院では診察や血圧脈波検査装置などで診断を行います。必要に応じて専門施設で造影CTや血管造影で精査し、適応のある症例には血管内治療やバイパス術にて治療します。なお、よく似た症状が、脊椎の異常により脊髄や神経が圧迫されることにより生じる場合(脊柱管狭窄症など)があります。こちらが疑われる場合は脊椎脊髄治療の専門施設への受診が必要となります。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤とは足の血管がふくれてこぶの様になる病気です。しかし、自然に治ることはありませんので、足にこぶの様な血管が目立つ見た目の問題、だるさやむくみなどの症状が日常的に起こり、患者さんを苦しめます。
重症になると、湿疹ができたり、皮膚が破れたり(潰瘍)、出血をおこすことがあります。下肢静脈瘤は、この静脈の弁が壊れることによっておこる静脈独特の病気です。弁が壊れてきちんと閉まらないために下流の静脈に血液がたまり、静脈がこぶ(瘤)のようにふくれてしまいます。
また、汚れた血液が足にたまるために、むくみやだるさなどの症状が起こります。弁が壊れる原因には遺伝や妊娠・出産、長時間の立ち仕事などがあります。肢静脈瘤のおもな症状はふくらはぎのだるさや痛み、足のむくみなどです。これらは1日中おこるのではなく、長時間立っていた後や、昼から夕方にかけておこります。夜、寝ているときにおこる“こむら返り(足のつり)”も下肢静脈瘤の症状です。また、皮膚の循環が悪くなるため、湿疹や色素沈着などの皮膚炎をおこす事があります。
皮膚炎が悪化すると潰瘍ができたり、出血することがあります。
フットケア
足潰瘍(かいよう)や足壊疽(えそ)などの「糖尿病足病変」の予防を目的として、糖尿病の方を対象としたフットケア外来を開設しています(当院は施設基準を満たしています)。
フットケア外来糖尿病を持つ方が、足の障害を防いで、いつまでもご自身の足を守っていけるよう、それぞれの患者さんに適した日々のお手入れ方法を一緒に考え、ご自身でケアできるようにお手伝いさせていただく外来です
心臓リハビリテーション
心臓リハビリテーション学会指導士、心臓血管外科専門医、看護師、理学療法士が連携し、患者様の運動機能を向上することを目指します。
医師の管理下で、理学療法士が患者様の運動機能や現在のお身体の状態を丁寧にチェックし、一人ひとりに合わせ最適なプログラムを作成します。
睡眠時無呼吸症候群
いびきと睡眠時無呼吸症候群(SAS)と同一の病気ではありませんが、いびきと無呼吸は同じ人で、睡眠中に交互に出現することがよくあります。SASは、睡眠中に呼吸が止まる「無呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態を指します。
朝起床時に熟睡感が得られず、まだ眠気が強くすっきり起きることができない。あるいは、昼間にすぐ眠ってしまう(昼間の傾眠)、などの症状が現れます。
またこれらの症状が原因で、心臓の肥大や不整脈、血圧の上昇などのトラブルが起こり、心血管疾患のリスクが高まります。
当院では専用の機器用意しており、検査が可能です。